内部転換速度定数の理論計算と理論解析
内部転換速度定数の理論計算と理論解析
無輻射遷移は系間交差と内部転換によるものです。内部転換の速度定数は振電相互作用定数に依存します。振電相互作用定数を計算することで内部転換の速度定数を理論計算・解析することができます。これまでに有効モード近似手法(応用例2)や解析的全モード計算手法(応用例3)を開発しています。全モードを考慮した計算手法では内部転換で支配的なモードの帰属ができ、今まで不明瞭であった内部転換の支配因子を定量的に解析することが可能です。
有機EL材料であるTATは比較的高い量子収率を示す分子です。内部転換の速度定数を振電相互作用定数を用いて導出し、速度定数と振電相互作用の依存性が示されています。TATは振電相互作用が小さく、それによって内部転換が抑制されるためであるということも示されています4。
TAT
応用例2
有効モード近似による内部転換速度定数評価方法を開発し、ラジカル発光分子に適用をしました。実験で得られた内部転換速度定数と定量的に一致することが示されています5。
応用例3
全ての振動モードを考慮した内部転換速度定数の解析解を導出しました。得られた解析解に基づくことで、従来のエネルギーギャップ則から振電相互作用を含むより一般的な法則を導きました。さらに無輻射遷移を引き起こすプロモーティングモードと、電子励起エネルギーを受け取るアクセプティングモードに分類することで、内部転換過程における支配的な振動モードを特定することができます。振電相互作用密度理論によってそのような振動モードの振電相互作用の起源を明らかにすることができます6。(株式会社MOLFEX, 京都大学 佐藤徹研究室の共同研究)
提案
当社技術を用いて振電相互作用定数を計算し、内部転換の速度定数を制御した蛍光材料が設計可能です。
参考文献
(4) M. Uejima, T. Sato, D. Yokoyama, K. Tanaka, and J. Park, Phys. Chem. Chem. Phys., 16, 14244-14256 (2014).
(5) S. Kimura, M. Uejima, W. Ota, T. Sato, S. Kusaka, R. Matsuda, H. Nishihara, and T. Kusamoto, J. Am. Chem. Soc., 143, 4329 (2021).
(6) W. Ota, M. Uejima, and T. Sato, https://doi.org/10.26434/chemrxiv-2022-49xgz (2022).